自己効力感を高めよう
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自己効力感を高めよう
この記事を読むのに必要な時間は約10分です。
こんにちは!へびぺんです。今回は「自己効力感を高めよう」というテーマで記事を書いていきたいと思います。
さて、自己効力感という概念ですが、実は前回の投稿レジリエンスを高めるためには?
の中でもレジリエンス向上のためのキーワードとして登場しています。
しかし、前回の記事ではチョイ役程度の存在感であり、あまりちゃんとした紹介が出来ていませんでした。
そこで、今回は自己効力感について調べた結果の紹介、及び自己効力感を高める有力な方法について書いていこうと思います。
自己効力感とその重要性
自己効力感とは?
さて、内容に入る前に自己効力感という概念について簡単におさらいしておきましょう。
前回の記事でも書きましたが、自己効力感とは「個人の行動遂行能力に対する確信の程度」[2]と説明されています。
文献[1]で紹介されている一部の理論では、
自己効力感は(1) ある特定のことに対して、上手くできそうだという感覚と、
(2) 一つに限らず複数のことに対して、上手くできそうだという感覚の二つに区別されています。
(1)については、特定の課題を上手くできそうか、という感覚であり、(2)は、もうちょっと一般的な、いわゆる自信のような感覚に近そうですね。
今回の記事は、自己効力感とは(2)を意味することを前提として書いていきたいと思います。
なお、自己効力感は文献によっては「セルフ・エフィカシー」と呼ばれていますが、この記事では自己効力感という言葉に統一します。
自己効力感の重要性
さて、上記で「自己効力感とはなんぞや?」ということをご紹介したわけですが、そもそも自己効力感とはなぜ重要なのでしょう?
「え、自信を持つことはいいことじゃん?幸せになれそうだし」というごもっともな反応が帰ってきそうですね。
はい、おっしゃるとおりです。実はそれを裏付ける書籍や論文を探してご紹介しょうと思っていたのですが、私のヘッポコ調査力では見つけることが出来ませんでした…
もし、どなたか自己効力感と(主観的)幸福感の関係について論じている文献をご存知でしたら教えていただけると幸いです。
ただし、自己効力感とレジリエンスの関係については、正相関であることが示唆されています[3]。ご興味のある方は読んでみてください。
自己効力感を高めるためには
自己効力感を変化させる4つの要因
それでは、自己効力感を高めるためにはどのようなことを行えば良いのでしょうか?
それを考えるヒントが、自己効力感という概念の生みの親であるアルバート・バンデューラ氏の論文
『Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change』に記載されています[1]。
ここでは、自己効力感を変化させる要因を遂行行動の達成、代理的経験、言語的説得、情動的喚起の4種類に分類しています。
以下で、それぞれについて詳しい説明を書いていきたいと思います。
余談ですが、上に書いたバンデューラ氏の論文は、この分野のレジェンド論文のような位置づけみたいですね。引用数65000というのは半端ないです…
遂行行動の達成
いきなり難しそうな言葉がでてきました。
しかし、これは一回うまく行ったことは、次もうまく行くことが期待できるということを意味しており、見かけほど難しいことを行っているわけではありません。
よく自己啓発本などで、「小さい成功体験を積み重ねよう!」ということが主張されていますが、これは遂行行動の達成に基づいた考え方ですね。
さて、遂行行動の達成における具体的な取り組みですが、参加モデリングや現実脱感作法というものが挙げられています[1]。
参加モデリングとは簡単に言えば、自分が達成したいと望む行動を模倣することで、自己効力感を高める手法です[4]。
確かに先生に見せてもらったお手本を模倣して成功することによって、自己効力感を育めそうですね。
もう一つの現実脱感作法についてですが、まず脱感作法とは何か?という点からご説明しましょう。
脱感作法とは、正確に言えば行動療法の一つである系統的脱感作法(Systematic desensitization)のことを指します。
具体的には、自分の中に不安や恐怖が発生する状況を特定し、そのような状況で(瞑想などを通じて)筋肉を弛緩させることによって、不安や恐怖を克服していくというものです[5]。
脱感作法は、不安や恐怖が発生する状況をイメージの中で再現して行うものと、実際に不安や恐怖が発生する現実の場で行うものがありますが、現実脱感作法は後者のことを指します[6]。
代理的経験
代理的経験とは、「他人が行っているさまを観察することによって,『これなら自分もできそうだ』と感じ」[1]るようなことを指しています。
遂行行動の達成の項目で取り上げた参加モデリングは、代理的経験の積むことにもつながっていそうですね。
プログラマーとしての私の経験から言えば、周りに優秀な人がたくさんいると、彼らのやっていることを真似て新しいことにどんどん取り組む事が出来ます。そしてその結果、自分に出来ることが増えていって、自己効力感を高めることにつながっているように思えます。
そういう意味でも、優秀な人と一緒に仕事をするというのは自己効力感を高める上で有益なのかもしれません。
余談ですが、代理的経験を得るための手法として「象徴的モデリング」という手法が挙げられていました[1]が、Webサイトの説明[7]を見る限り、代理的経験には関係なさそうに私には見えました…
私が何か勘違いしている可能性もあるので、もし関係性をご存知の方がいたら教えていただけると幸いです。
言語的説得
これは「自己や他者から説得的な暗示」[1]をかけることです。要するに「俺(君)は出来る…!」と言葉で説得することですね。
この項目はこれ以上深堀り出来ないので、これで終了します。笑
ただし、この「言語的説得」をアプリによって効果的に実現するアイデアがあるため、近々実装したいなと思っています。
情動的喚起
情動的喚起とは、「その行動を遂行できるかどうかの判断のより所となるような生理的な状態の知覚」[1]単語も説明内容も何やら難しげですね…
ちなみに、情動的喚起は海外サイトでは”Emotional and physiological states”と記載されており、生理的な状態のみならず、感情の状態を含んでいるようです[8]。
本記事でも、その解釈を取り、情動的喚起は生理的な状態と感情的な状態を含む概念としたいと思います。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、その上で情動的喚起を簡単に言い換えると、なにかやるときに、自分の体や心がどのようになっているか知っていること
と言い換えることが出来ると思います。例えば、テスト前には緊張して喉がカラカラになる、というようなことを知覚することを指しています。
ただし、自己効力感を高めるという観点では、ただ自分の体や心の状態を知っているだけでは不十分であると思います。
すなわち、体や心の状態を知った上で、良好な状態に持っていけるようトレーニングできればなおよいでしょう。
テストの例では、「緊張するけど、うまくやってやろう」というワクワクする気持ちを持つことができれば、それは自己効力感につながると思います。
それを実現するために、専門的には先に挙げた系統的脱感作法のような手法が存在するのでしょう。
一方、我々にもっと身近な方法としては、イメージトレーニングが挙げられると思います。
私自身も緊張するようなイベントの前は、上手く行っていることをイメージしてポジティブな感情を作り出すよう意識しているのですが、
この方法はなかなか上手く行っています。
終わりに
さて、ここまで自己効力感を高める4つの要因をご紹介してきました。それぞれをバラバラに使うというよりも、うまく組み合わせて使うことによって自己効力感を高めることに繋げられそうですね。
言語的説得の項目で少しだけ触れましたが、近々自己効力感の向上を支援するアプリを作る予定ですので、進捗がありしだいブログ記事にしたいと思います。
今回は短めの記事を書こうと思っていたのですが、結局そこそこの長さになってしまいました…
読むのも大変だったと思いますが、ここまで読んでくださりありがとうございました。
参考文献
[1]坂野雄二・前田基成 (2002) 『セルフ・エフィカシーの心理学』 北大路書房.
[2]江本リナ (2000) 『自己効力感の概念分析』日本看護科学会誌. link
[3]Hamill, S. K. (2003). Resilience and self-efficacy: the importance of efficacy beliefs and coping mechanisms in resilient adolescents. Colgate Univ. J. Sci. 35, 115–146. link
[4]“Participant Modeling”. AlleyDog.com. link
[5]“Systematic desensitization”. Wikipedia. link
[6]“系統的脱感作法”. 知っておきたい 『心理学用語』. link
[7]“Clean Language, Symbolic, Modeling and the Metaphor Therapy”. GoodTherapy. link
[8]“What is Self-Efficacy Theory in Psychology?”. positivepsychologyprogram.com. link
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